2008/08/19
8月の樹 ~秋田県東成瀬村・ブナの森
- カテゴリ:
- 樹のある風景
みなさん、こんにちは。写真家の竹内敏信です。この写真は、秋田県東成瀬村(ひがしなるせむら)のブナの森です。撮影したのは2001年の夏の盛りだったでしょうか。夏の山々の風景を求めて東北地方を回っていたときに、この風景と出合いました。
秋田県の南東端に位置し、東は岩手県に、南は宮城県に接している東成瀬村は、そのほとんどを山林原野が占めています。このような開発が入っていない風景は、目にとまったときに、小まめに撮影するようにしています。というのは、次に訪れる機会があるかどうかよりも、今目にしているこの風景が、その先もここにあるのかが、わからないからです。
ですので、再度、同じ場所に訪れる機会があった場合も、前に訪れたときに撮影したからもういいとは思わずに、新たな気持ちで、あらためて撮るようにしています。といっても、やみくもにシャッターを切ることはしません。
この写真は、中判のフィルムカメラで撮影したものですが、デジタルカメラが主流となった今は、フィルムカメラの頃とは違い、撮れば撮るほどフィルム代がかさむようなことはありません。そのため、やみくもにシャッターを切る人もいますが、デジタルカメラであっても、フィルムカメラの頃と同じように、1カット1カット、思いを込めて撮るべきです。言うまでもなく、写真はカメラが撮るものではなく、人が撮るものだからです。
どのように撮れば、その風景を目にしている、今の自分の気持ちを表現することができるのか、今の自分の目に映った姿を、ありありと捉えることができるのか、を深く考えながら撮影することが大切です。その意味では、デジタルカメラの時代は、フィルムカメラの時代以上に、写真を撮る者に対して、風景の向き合い方をあらためて意識させると思います。
撮影にあたっては、絵心とバランス感が求められますが、フレーミングにおいては、写真を見た人に対して、写真に映っていないところまで感じさせるには、どのように撮ったらいいかを考えます。その、ひとつの見せ方は、この写真のように、あれもこれもと詰め込んで撮るのではなく、思い切って被写体の特長を切り取る撮り方です。
広角レンズを使って全体を姿を収めるのではなく、風景と対話しながら、たとえば、この青い空に雲がなかったら、今日が青空ではなく曇り空だったら、日差しが陰って弱くなったら等、刻々と移りゆく自然のなかで、主題となる木の存在感を引き出す形で撮影しました。画面左下にある白い雲のありなしで、写真の印象は、ずいぶんと違ってきます。この写真では、偏向フィルターを使うことで、雲の白を、より際立たせています。
カメラ雑誌の写真の撮り方のような話のようになってしまいましたが、僕が言いたかったのは、目の前の風景を何となく眺めてシャッターを切るのではなく、その風景のどこに自分が魅せられたかを考えながら風景を注意深く眺めると、何度も目にしている風景であっても、それまでとは違った形で見えてくるということです。
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