2009/03/18
3月の樹 ~静岡県南伊豆町の春の息吹
- カテゴリ:
- 樹のある風景
みなさん、こんにちは。写真家の竹内敏信です。この写真は、2002年の3月の終わりに静岡県の南伊豆町で撮影しました。カメラは中判のフィルムカメラを、レンズは150~300mmのズームレンズを用いています。
南伊豆は、伊豆最南端の岬でもある石廊崎などの景勝地がよく知られていますが、この風景は、春の訪れの風景を求めて伊豆半島を回っていたときに、地域の集落の外れで出合いました。白い花を咲かせた桃と、濃いピンク色の山桜と、黄色い菜の花が、緑色の草地で競い合うようにして咲いているのが印象的でした。
桃と山桜と菜の花それぞれが、同じ場所で、同じタイミングで咲いているだけでなく、曇でもなく強い日差しでもない春先の柔らかな光が4色の調和を演出するような光のバランスに心を動かされました。
そこで、ひとつの画面のなかで、緑と白とピンクと黄色の4色が競演するかのような画面構成にしようと、空が入らないように(4色以外の色が入らないように)、カメラのアングルをやや下向きにしてセットし、ズームレンズの望遠寄りを使って、4色の木々や花のバランスが最適になるようなフレーミングを考えました。
画面奥に位置する菜の花は、写真では、桃の木と桜の木のすぐ後ろで咲いているように見えますが、これは、手前の被写体と奥の被写体の距離感が圧縮されるという望遠レンズがもつ効果によるもので、実際は、菜の花は、木々のずっと奥に咲いています。
手前と奥との遠近感を調整することで、写真を見る人の目線を、それぞれの木や花、色合いに引きつけることができます。自分がその風景から感動を受けたポイントを上手に引き出した絵づくりをすることで、見る人への訴え掛けを、より明確に、より強調した写真にすることができます。
今はカメラが優秀なので、シャッターを押すだけで、ピントの合った、適切な露出の写真が簡単に撮れるようになりましたが、構図とレンズの選択は、カメラ任せというわけにはいきません。自分が感じたイメージを表現するには、カメラやレンズの特性をつかんで、それを使いこなしていくことも大切です。
さらには、目にした風景に対して素直な気持ちでカメラを向けるだけでなく、自分は、その風景のどこにひきつけられたのか、その気持ちを他の人に伝えるには、どうすればいいのかを考えてみてください。写真を撮り続けるだけでなく、ときには人が撮った写真を見て、撮影者の思いを想像することも写真の上達に役立ちます。
風景写真は、名勝地だけのものではありません。見る人の感じ方や捉え方で見えてくる風景もあります。この、南伊豆での風景も、撮影者の感じ方や捉え方ひとつで、そこにあるのが当たり前のような身近な風景が、決してありふれたものではないことを気づかせてくれました。
さて、早いもので、昨年の4月にスタートしました本シリーズも、12回目となりました。掲載月に合わせて、日本国内の「樹のある風景」を、1年にわたってご覧いただきましたが、次回からは少し雰囲気を変えて、私がヨーロッパで出合った「樹のある風景」をお目にかけたいと思っています。ご期待ください。
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